ソウル・インタビュー

ワクワクはただの入り口。その先で出会う「本来の自分」とは?

 

「ワクワクは単なる入り口。その先にあるのは、ユートピアばかりじゃない」
コーチとして15年以上活動されてきた赤木広紀さん。ご自身の人生経験から滲み出る言葉は、やはり深みがありますね。

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「本来の自分」を生きることで見えてくる世界

ファインネットワールド代表 赤木広紀さん(プロコーチ)

 


―赤木さんは15年以上コーチとして活動されていますよね。これまでにどのくらいの方とセッションをされてこられたのでしょう?

 

2001年にプロコーチとなったので、今年で17年になりますね。

1対1のパーソナルコーチングで関わった方は約300人。セッション回数は約5000回となります。最も長い方では14年間継続しておられるクライアントさんもいらっしゃいます。

 

―14年間ですか。まさにライフコーチングと呼ぶに相応しいですね。

 

そうですね。「本来の自分に気づき、本来の人生を生きる」ということを会社のミッションとして掲げているので、長期的なライフコーチングになるのは自然なことなのかもしれません。

 

―「本来の自分に気づき、本来の人生を生きる」。赤木さんの考える「本来の自分」「本来の人生」とは、どのようなものなのでしょうか?

このミッションは2002年に決めて、その後ずっと変わらずに使っています。ですが、僕の中で言葉の持つ意味はかなり変わりましたね。

当初は、その人がワクワクできることを見つけて、情熱を持って生きるということを意味していました。コーチングも、そこを目指してセッションを提供していたんです。でも、次第に違和感を覚えるようになったんですね。

 

―違和感、ですか?

 

そうなんです。ワクワクすることや、本当に好きなことを見つけるというのは、実は「本来の自分」に至る入り口に過ぎないんです。

僕自身、コーチングに出会ってワクワクし、コーチとして人生を送れるならずっと情熱的な楽しい人生が続くと信じていました。でも、違うんですよね。ワクワクの扉を開けて歩き出したとしても、そこで体験するのは決してワクワクばかりじゃない。一面バラ色のユートピアではなかったんです。

 

―当然辛いこともある、という話でしょうか?

 

もちろん辛いこと、苦しいこともあります。しかも、それが経験したことのないほど厳しいものに感じるんです。例えば売り上げが伸びず、経済的な危機に直面するとか。

「本来の自分はいつも輝いているはずだ」「自分らしく生きるのは素晴しいことだ」という強い思いで選択し、突き進んできた道なのでイメージ通りに幸せになれないことが受け入れ難いんですね。そして、もがけばもがくほど、ますます苦境に陥っていくんです。

 

「じゃあ、元の生活に戻ればいいじゃないか」という人もいますが、そう簡単なことでもない。自分の選択を完全に否定してしまうことになってしまうので、それはそれで引き裂かれるような苦しみを味わうんです。まさに「引くも地獄、進むも地獄」そんな心境です。

 

―赤木さんも、そういう心境に?

 

何度か陥りました。うまくいかない状況になったときに、これまで見ようとしてこなかった自分に出会ってしまったんです。

だめな自分、情けない自分、みじめな自分、怠け者の自分……。そんな蓋をして押し殺してきた自分に、まさに直面してしまう。「成長」「向上心」「ポジティブ思考」といった言葉を信じて仕事に励み、周囲の評価も得てきたので、そんなネガティブな自分が許せないんですね。

だから、なおさら見たくない。そして自分をバッシングし続けて、さらに苦しくなって……。

でも、そのまま落ち込んでいるわけにもいかないので、歩み続ける覚悟を決めたんです。そして、見捨ててきた自分を真っ正面から受け止めてみたんですね。

すると、良い自分とか、だめな自分とかいうものはなく、すべては単なるひとつの資質にすぎないということが分かったんです。そこにレッテルを貼っていただけだったと。

 

―ひとつの資質?

 

そうです。例えるなら、資質は空に浮かぶ雲のようなものですね。空にはうろこ雲もあれば、入道雲もある。もちろん真っ黒な雨雲だってあります。なのに、それまでの自分は真っ白にまぶしく輝く雲だけを受け入れ、そうでない雲を嫌悪していたんですね。

でも、本当は良いも悪いもない。雲は、単なる雲に過ぎないですから。ワクワクも、情熱も、みじめさも、情けなさも、どんな形の雲もすべて包み込んでいる空そのものこそ、「本来の自分」だと気付いたんです。

 

―つまり、雲そのものに価値はないと。

 

いえ、そういうことではないんです。資質にはそれぞれ大切な価値があります。ただ、それが自分の全てではないということなんですね。例えば、虚無感にさえ価値があるんです。

僕はかつて、コーチングで目標達成することが虚しくなった時期がありました。目標達成は単にエゴの欲求を満たすだけで、クライアントを真の幸福には導けないと感じて。

しかしエゴを否定するということは、生きる意欲を否定するに等しい。すると何のためにコーチングをしているのか分からなくなり、3年近く強い虚無感の中で苦しみました。虚無と一体化していたんですね。

でも、そのお陰で自分にとって純粋に大切なものは何か、しっかりと見極めることができたんです。そしていまは、虚無も自分という空に浮かぶ雲のひとつだと受け入れることができています。

 

―なるほど。では、赤木さんのセッションも「空である本来の自分に気付く」ということをゴールにされているんでしょうか?

 

そこを押しつけたり、誘導したりということはしません。あくまで「クライアントファースト」で、本人が望む目標、進みたい方向に沿ってサポートを続けます。

ただ、こちらの視点として目標達成というゴール以外のものも見据えている、という感じでしょうか。

例えば、「月収100万円以上を達成する」というゴールを掲げる方を支援したとします。その過程のなかで、さまざまな課題が生じてきます。上手くいかないことも出てくるでしょう。でも、僕はその上手くいかない体験こそ大切だと知っていますし、それこそ「本来の自分」という意味では「とても上手くいっている」という場合もあるんです。

月収100万円以上というゴールを達成したなら、当然喜んでいいんですよ。喜びもなく走り続けていれば、いずれ必ず燃え尽きてしまうので。

でも、その喜びは、言ってみればスイーツのようなもの。人生の血肉となっていくような貴重な栄養は、むしろまったく稼げず、もがき苦しんでいる時期にこそあるのかもしれません。

そしてそのような体験こそ、まさに「本来の自分」に気付いていくための有難い恩寵となり得るのです。

 

―表面的な出来事だけではなく、人生の全体性を見つめている……そんなセッションに感じますね。クライアントはその中で自由に変化し、自由に気付いていけるのかもしれません。

 

自分が囚われているものが単なる雲だと気付けたならば、クライアントさんもとても楽になります。

だけど、気付くことが善で、気付かないことが悪ということではありません。実際、だれもが一生懸命生きているんです。そうして固有の人生を体験しながら、深層部分では「本来の人生」を生きているんです。どんなにぶ厚い雲に覆われているとしても、その背後にはいつだって青空が拡がっているんですから。(インタビュアー 大村たかし)

 

 赤木広紀(あかぎ ひろき)

 

大学卒業後、中小企業を対象にした研修・コンサルティング会社に営業として入社。 
経営者や経営幹部、中間管理職から一般社員まで1000名を越える人と幅広く面談を重ねる。2001年に28歳でコーチとして独立。オフィスファインネット(現、株式会社ファインネットワールド)を設立。現在までに 経営者・経営幹部・専門家 (公認会計士、税理士、医者、社労士など)・ビジネスパーソン・主婦・学生など、292人の様々な職業・年代の人たちに対し、4973回のコーチングセッションを提供。(2018年10月1日現在)。コーチングの世界的権威である国際コーチ連盟(ICF)が日本で認定するコーチングトレーニングプログラム (コーチA・CTIジャパン提供)をすべて修了。ICF認定プロコーチ。京都府在住。

 

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