ソウル・インタビュー

「人間の身体は、計り知れないほど美しい」 

「ニュートラルに戻る」「本質に気づいていく」……。

アマンダ美帆さんに会うと、ときどき出てくるこの言葉。いったい、どういう意味なんだろう? とずっと気になっていました。そこで、中国山地の山里にあるアマンダさんのサロン「和癒庵」(わゆあん)に伺って、じっくりお話を聴いてみることに。

サロンで提供されている「クラニオセイクラル」という施術のこと、クラニオに寄せるアマンダさんの想い……。そこには確かに、体験してみないと分からない、言葉を越えた「何か」がありました。

―ここは本当に素敵な場所ですね。風の音と、鳥の声だけが聞こえてきます。いるだけでなんだか心が解放されていくようです。

 

山に抱かれているようなところですよね。この地で子育てできて、本当に良かったと思っています。

 

―もともと、こちらのご出身なのですか?

 

いえ。美和町には父の実家があっただけです。私は10年以上前に、二人の子どもを連れて移ってきました。それまでは神戸で看護師をしていたのですが、違和感を覚えるようになって……。違和感のない場所で暮らしたかったんですね。

 

―違和感、といいますと?

 

二人目を出産した直後から、私のなかで何かが起こったのです。それまで私は都会の病院でバリバリと働いていました。テレビの「救急救命24時」みたいに本当に忙しく、大変な職場でしたが、自分の仕事に情熱と誇りをもっていました。けれど二人目の出産後、「何かが違う」と感じるようになったんです。

特に生活環境に対する居心地の悪さが我慢できなくなっていきました。大地から離れた高層マンションに住んでいること。公園などの憩いの場もすべて人工的なもの。そんな「作り物」に囲まれながら子どもを育てていくことに抵抗を覚えるようになったんですね。

 

―なるほど。それでこちらへ。

 

ええ。子どもたちにもっと土に触れてほしい、服を泥だらけにして遊んでほしい。子ども時代を思い切り体験できる土地で育てたいという思いが、私の内側でどんどん大きくなっていきました。その場所として、ここは最高だったんです。

といっても、当初はずっとここにいるつもりはありませんでした。それが数ヶ月いるうちに、里山の空気のなかで自分自身が癒されていったんですね。

自覚がなかっただけで、本当はずいぶんと疲れていたんだと気づいたんです。しばらくして、この町の病院で看護師として働きはじめました。実はその病院で知り合った方の友だちに、クラニオセイクラルをされている方がいたのです。

 

―この環境に移ってきたことから、クラニオへと繋がっていくのですね。

 

そうなんです。その知り合いに勧められて、一度受けてみることにしたんですね。すると、組織で看護の仕事をすることが、自分の本質とはずれていることに気づいたのです。

 

―はっきりと、何かを感じたのですか?

 

いえ。明確になにかが起こったというのではないのです。ただ、「なんとなく違う。ずれている」と感じている自分に気づくようになって。きっとそれまでもずっと感じていたけれど、気づかないふりをしていたんだと思います。

そこから、もっと本質的に癒される体験を重ねたい、また本質的な癒しを提供できるようになりたいと思うようになり、クラニオの勉強をはじめました。クラニオセイクラルベーシックセミナーは、論文発表までを合わせると4年半続きます。その間に900時間以上クラスを受け、無償での施術を100セッション以上提供し、いくつかのレポートを提出しなければなりません。

幼い子どもを抱えながら学び続けるのは正直言って経済的にも十分ではなかったので葛藤もありましたが、なんとかやり切りました。

 

―なにがそこまで、アマンダさんを動かしたのでしょう?

 

そうですね……。表現するのは難しいのですが、やはり本質という言葉が一番相応しいと思います。クラニオを学んでいく時間は、同時に自分を「ニュートラル」な状態に戻していく過程でもあるのです。そこに本質的なものを感じていたのだと思うのです。

 

―ニュートラル?偏りがない、ということですか?

 

ええ。身体も、心も、生き方も。自然に沿って、自然のままに生きていくということです。言葉にするとシンプルですが、私たちの多くはニュートラルな状態がどんなものか分からないまま、生きているのです。

私の場合もそうでした。シングルマザーで後ろ指をさされないように、家事も仕事も完璧でないといけないと思い込んでいたんです。いつもファイティングポーズで、誰かがなにか言ってきたら応戦したり、正しさの刀で人を平気で切りつけたり。私は正しく、相手が間違っているというジャッジの仕方をずっとやり続けていました。にもかかわらず、自分は優しくて、「できる人」と評価されて当然と思っていました。

 

―そういう人は珍しくないでしょうね。僕も似たようなものだと思います。

 

そのころは、仕事から帰って部屋が片付いていなかったら、子どもたちを感情のまま叱りつけていました。子どもたちはのんびりしていたのに、私が帰ってきたら萎縮していたんです。

でもクラニオをはじめて、「お母さんがよく笑うようになった」「話しやすくなった」「甘えられるようになった」と言うようになって、ハグしにくるようになりましたね。私が緩んでいったのだと思います。それを子どもたちは敏感に察していたのでしょうね。

―お子さんたちにとっては、お母さんがとても優しくなって嬉しかったでしょうね。本質、そしてニュートラルに戻るということで周りにもいい影響が生まれるということですが、実際のクラニオセイクラルのセッションでは、どんなことが行われるのでしょうか?何か「気」のようなものを送るのですか?

 

いえ。そういうものとはまったく違います。ただ、身体の数カ所にそっとニュートラルに触れていくだけなんです。

 

―触れるだけ?

 

そうです。人の身体は60兆の細胞から成り立っています。それらはすべて、宇宙創生以来の叡智の結晶です。そうした計り知れない叡智への尊厳を感じながら、治癒力が十分発揮されるように協力していくのです。

施術者である私たちは、「ニュートラルな状態に寛ぐこと」から始めます。そこから施術を進めると、場が共鳴を起こしてクライアントもニュートラルな状態へと落ち着いていかれます。ニュートラルな状態というのは、より本質的で繊細で柔らかな、私たちの本来あるべき姿、健全な状態を体現するものです。

―なるほど。だから施術する側の人は、ニュートラルに繋がるということを長い時間かけて体現していく必要があるのですね。

 

はい。「何か変化を起こそう」とか「癒してあげよう」「いい結果に導こう」という思いさえ手放し、ただニュートラルな状態を保ちながら深めて行く。それだけで、私たちの細胞は本来の状態へ戻ろうとする力が漲るようになるのです。

こういう説明をするとスピリチュアル的なものに感じられる人もいるかもしれませんが、クラニオはそうした曖昧なものではありません。講義では解剖生物学などを基盤に、人間の発生に関すること、胎生学、身体の構造、体液の循環、特に脳脊髄液のリズムにも注目をしています。

また、筋膜の構造や質感について十分な時間をかけて学んでいきます。これらを学ぶ過程で、人間の身体がいかに美しいものなのかを身体に落とし込むように学ぶのです。

身体が美しいということに深く気がついていくようになると、触れていく自分の手そのものが変化するのがわかりました。そんな美しい身体を掴んだり、叩いたりすることなど、とてもできない。繊細で、尊厳を持って、丁寧に触れていく。そのように尊重された身体は、心地よさの中に寛ぎながら、活力がみなぎるようになり調整力や回復力を十分に取り戻すようになります。

 

―なんというか……、頭で理解しようとしても、ちょっと無理なのかもしれないですね。身体知というか、体験が必要な感じがしてきました。

 

そうなんです。これは理屈だけで学べるものではありません。体験を通して、少しずつ体現していくしかないものですから。

 

~~クラニオセイクラル体験記~~

 

健康状態や手術歴などのチェックをして、アマンダさんと静かにお話していると、少しずつ自分がこの場に馴染んでいく感覚がありました。

「では、こちらへ」と施術用のベッドに仰向けになると、そこからはアマンダさんが足や肩、仙骨などにそっと触れている時間が続いていきます。

聞こえてくるのは、風が木々を吹き抜ける音と、鳥や虫の声だけ。あまりの心地よさに、僕は何度も短く寝落ちしてしまいました。

始まったときと同じく、地面に舞い落ちるタンポポの綿毛のようにそっと終わっていくセッション。少なくとも3時間は過ぎていると感じていましたが、実際には1時間ほど。それほど濃密な時間だったということでしょうか。

「(セッション後の)身体はニュートラルな状態によってサポートされ続けます。その変化は日常生活のなかで起きていくので、何に自分が気づいていくか、楽しみにしていてください」

アマンダさんの言葉を思い出しながら自宅へ帰ると、全身が心地よい脱力感に包まれていることに気づきました。それは子どもの頃にプールで泳いだあとの感覚に似ています。ただ横になっていただけなのに……。

そして、もうひとつ。身体の奥の方に感じる「何か」。その「何か」を意識すると、セッション中のあの心地よさが、自分のなかに蘇ってくるのでした。

 

でも、この「何か」をどう言葉にすればいいのか……。確かにこれは、体験したものだけが感じられる感覚なのかもしれません。

 

~~~~

トータルヘルス・ヒーリングサロン和癒庵

住所/山口県岩国市生身2181

URL/https://craniowest.jimdo.com/